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もめんいぜんのこと
木綿以前の事
柳田 国男
木綿以前の事「女性」1924(大正13)年10月、何を着ていたか「斯民家庭」1911(明治44)年6月、昔風と当世風「彰風会講演」1928(昭和3)年3月、働く人の着物「旅と伝説」1936(昭和11)年7月、国民服の問題「被服」1939(昭和14)年5月、団子と昔話「ひだびと」1936(昭和11)年3月、餅と臼と擂鉢「社会経済史学」1934(昭和9)年1月、家の光「家の光」1926(大正15)年2月、囲炉俚談「文学」1935(昭和10)年3月、火吹竹のことなど「知性」1939(昭和14)年4月、女と煙草「ひだびと」1939(昭和14)年2月、酒の飲みようの変遷「改造」1939(昭和14)年2月、凡人文芸「短歌研究」1934(昭和9)年2月、古宇利島の物語「短歌民族」1933(昭和8)年5月、遊行女婦のこと「俳句研究」1934(昭和9)年4月、寡婦と農業「農業経済研究」1929(昭和4)年10月、山伏と島流し「俳句講座」1932(昭和7)年8月、生活の俳諧「第一高等学校講演」1937(昭和12)年12月、女性史学「実践女学校講演」1934(昭和9)年7月、女性史学「民間伝承」1936(昭和11)年3月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 177,586 字 · 348 页
一度にうんと食べて二日も三日も食わずに働けるのは体力で、単なる痩我慢ではできない芸当である。今でも少しはまだ残っていると思うが、前夜自分の勝手で寝なかった者が、次の日は平気で働いて疲れた様子も見せぬこと、それから病気や怪我をしても、少しも弱らずに直ぐに治ってしまう自癒力ともいうべきもの、是らはいずれも近世に入ってひどく退歩した。それと今日の日常生活の変化とは、おそらく密接な関係があるであろうが、生理学の方からこれを考えている人は有るやら無いやら、第一にまず私などの思っているほど、大きな退歩があり変化があったことを、気づかぬ人も多いのである。
衣食住の変遷は、ごく近い頃の分は誰でも知っているであろうが、それがもう一つ前の時代から、永くかかって少しずつ地方的に変って来たことは、おそらく何人もまだ考えずにいる。この事は『三省録』という類の書物にも少しは載せてあるが、それよりもわが国現在の事実を比較して見れば、一層よく判明するのである。平民の生活ぶりは政治の歴史のように、一度にはっきりとは改まってしまわない。土地により環境によって一部は早く進み、他の各部は順次に遅れて進んで行く。