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もめんいぜんのこと

木綿以前の事

柳田 国男

木綿以前の事「女性」1924(大正13)年10月、何を着ていたか「斯民家庭」1911(明治44)年6月、昔風と当世風「彰風会講演」1928(昭和3)年3月、働く人の着物「旅と伝説」1936(昭和11)年7月、国民服の問題「被服」1939(昭和14)年5月、団子と昔話「ひだびと」1936(昭和11)年3月、餅と臼と擂鉢「社会経済史学」1934(昭和9)年1月、家の光「家の光」1926(大正15)年2月、囲炉俚談「文学」1935(昭和10)年3月、火吹竹のことなど「知性」1939(昭和14)年4月、女と煙草「ひだびと」1939(昭和14)年2月、酒の飲みようの変遷「改造」1939(昭和14)年2月、凡人文芸「短歌研究」1934(昭和9)年2月、古宇利島の物語「短歌民族」1933(昭和8)年5月、遊行女婦のこと「俳句研究」1934(昭和9)年4月、寡婦と農業「農業経済研究」1929(昭和4)年10月、山伏と島流し「俳句講座」1932(昭和7)年8月、生活の俳諧「第一高等学校講演」1937(昭和12)年12月、女性史学「実践女学校講演」1934(昭和9)年7月、女性史学「民間伝承」1936(昭和11)年3月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 177,586 字 · 348 页

青空文庫

四

そこへ夜分になると歌でも覚えようという者が集まってくるのである。ただの昼間ばかりの門つけとはちがって、彼らは是によって幾分か多くの収入を得、少なくとも寝食の入費を省き得たようである。売笑という語をもし文字通りに取るならば、粗野なる田舎の笑いには彼らから買うものが最も多かったろう。そうしていわゆる流転の生活も、彼らが最も適切に是を体現していたといえる。

四

ただし曾良の附句に描かれた遊女が、私は盲であったろうと思っているわけではない。まだあの頃にはこの一種の御前以外にも、色々の上が村をあるいていたらしいのである。瞽女は制度の保護などもあって、一番あとまで転向せずにいられたというだけである。地方の人たちのきれぎれの記憶の中から、他にどういう名の遊女があるいていたかを、今の内に聴いておきたいと私は念じている。秋田地方の風習には、雨乞に婦女が裸参りをする例が二三ある。それと関係があるらしいのは女相撲で、是が興行してくる年は必ず雨が多いと言われていた。こういう人たちの郷里も必ず何処かに有るのである。石川県などの在方では、昔の瓦版とよく似た一枚刷の読売ものを、歌いながらくるのは必ず女の群であり、是を人によって女万歳とも謂っていた。