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もめんいぜんのこと

木綿以前の事

柳田 国男

木綿以前の事「女性」1924(大正13)年10月、何を着ていたか「斯民家庭」1911(明治44)年6月、昔風と当世風「彰風会講演」1928(昭和3)年3月、働く人の着物「旅と伝説」1936(昭和11)年7月、国民服の問題「被服」1939(昭和14)年5月、団子と昔話「ひだびと」1936(昭和11)年3月、餅と臼と擂鉢「社会経済史学」1934(昭和9)年1月、家の光「家の光」1926(大正15)年2月、囲炉俚談「文学」1935(昭和10)年3月、火吹竹のことなど「知性」1939(昭和14)年4月、女と煙草「ひだびと」1939(昭和14)年2月、酒の飲みようの変遷「改造」1939(昭和14)年2月、凡人文芸「短歌研究」1934(昭和9)年2月、古宇利島の物語「短歌民族」1933(昭和8)年5月、遊行女婦のこと「俳句研究」1934(昭和9)年4月、寡婦と農業「農業経済研究」1929(昭和4)年10月、山伏と島流し「俳句講座」1932(昭和7)年8月、生活の俳諧「第一高等学校講演」1937(昭和12)年12月、女性史学「実践女学校講演」1934(昭和9)年7月、女性史学「民間伝承」1936(昭和11)年3月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 177,586 字 · 348 页

青空文庫

八

こんな微温的なる人生の観察者の、少しも出ないですむような時代を、実現させることは我々の努力の目標であるが、そういう世の中はまだ当分来そうもない故に、今とてもやや形をかえて、この種局外者の清談文学はなお要求せられている。それがもう元禄の俳諧のように、温雅にして同情に充ちたるものでなくなったことは、この日本のために一つの大きな不幸であるように私は考えている。

八

私の講演の主たる目的は、日本固有のこの一つの特色ある文芸から、どれだけまで他の手段では得られない前代知識が、得られるであろうかを説くにあるのだが、その前にちょっと触れておかねばならぬのは、俳諧の弱点、すなわちそれほどよいものならなぜ永続しなかったかという問題である。是にも前に挙げた連衆というものの特徴、すなわち作者側の能力ばかりが複雑に発達していて、読者側の要求がいかにも微弱であったことが、大きな原因の一つに算えられる。是は独り俳諧だけでなく、一般の問題としても現在もなお存在している現象で、つまりは文芸の成長してゆく道の、日本は今まさに中途にあるのである。あの面倒くさい西洋かぶれの小説ですらも、なお最も熱心なる読者は作者側にいる。