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もめんいぜんのこと

木綿以前の事

柳田 国男

木綿以前の事「女性」1924(大正13)年10月、何を着ていたか「斯民家庭」1911(明治44)年6月、昔風と当世風「彰風会講演」1928(昭和3)年3月、働く人の着物「旅と伝説」1936(昭和11)年7月、国民服の問題「被服」1939(昭和14)年5月、団子と昔話「ひだびと」1936(昭和11)年3月、餅と臼と擂鉢「社会経済史学」1934(昭和9)年1月、家の光「家の光」1926(大正15)年2月、囲炉俚談「文学」1935(昭和10)年3月、火吹竹のことなど「知性」1939(昭和14)年4月、女と煙草「ひだびと」1939(昭和14)年2月、酒の飲みようの変遷「改造」1939(昭和14)年2月、凡人文芸「短歌研究」1934(昭和9)年2月、古宇利島の物語「短歌民族」1933(昭和8)年5月、遊行女婦のこと「俳句研究」1934(昭和9)年4月、寡婦と農業「農業経済研究」1929(昭和4)年10月、山伏と島流し「俳句講座」1932(昭和7)年8月、生活の俳諧「第一高等学校講演」1937(昭和12)年12月、女性史学「実践女学校講演」1934(昭和9)年7月、女性史学「民間伝承」1936(昭和11)年3月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 177,586 字 · 348 页

青空文庫

五

それは政治や戦争のように、男たちの事務だけに限らぬのみか、食物は毎日の生活であるだけに、むしろ人生の幸不幸に影響を及ぼすことが大きいのである。単に今後の参考になるだけでも、学問の効果は無限だと思う。

五

同じことはまた第二段に、衣服の変遷についても考えてみることができる。人が近世甚だしく風を引きやすくなったことは、金歯以上の大事件であった。カゼは以前には流行病の一つ、または眼に見えぬ悪霊の所為とも想像せられていたことは、風邪という語からでもよくわかる。つまり今のように普通の病ではなかったので、この変遷と衣服とは関係があるらしいのである。我々の衣服はどう変ってきたかというと、是もやはり柔かくなり、また糸が細く目がこまかくなっている。「木綿以前の事」という一文に、かつて私はこの点を少しく考えてみたことがある。麻糸にも精粗の差はあるが、もともと手先の業だから常人の着物は糸が太く布が強くて突張っていた。まるまるとした人のからだの表面との間に、小さな三角形の空間が幾らでもできていた。日本は欧洲とは反対に珍しい夏湿の国で、住民はまたおそろしい汗かきである。汗は放散して冷を取るために出るかと思われ、扇はまたその水蒸気を、着物の下から追出すために用いられるのである。