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もめんいぜんのこと

木綿以前の事

柳田 国男

木綿以前の事「女性」1924(大正13)年10月、何を着ていたか「斯民家庭」1911(明治44)年6月、昔風と当世風「彰風会講演」1928(昭和3)年3月、働く人の着物「旅と伝説」1936(昭和11)年7月、国民服の問題「被服」1939(昭和14)年5月、団子と昔話「ひだびと」1936(昭和11)年3月、餅と臼と擂鉢「社会経済史学」1934(昭和9)年1月、家の光「家の光」1926(大正15)年2月、囲炉俚談「文学」1935(昭和10)年3月、火吹竹のことなど「知性」1939(昭和14)年4月、女と煙草「ひだびと」1939(昭和14)年2月、酒の飲みようの変遷「改造」1939(昭和14)年2月、凡人文芸「短歌研究」1934(昭和9)年2月、古宇利島の物語「短歌民族」1933(昭和8)年5月、遊行女婦のこと「俳句研究」1934(昭和9)年4月、寡婦と農業「農業経済研究」1929(昭和4)年10月、山伏と島流し「俳句講座」1932(昭和7)年8月、生活の俳諧「第一高等学校講演」1937(昭和12)年12月、女性史学「実践女学校講演」1934(昭和9)年7月、女性史学「民間伝承」1936(昭和11)年3月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 177,586 字 · 348 页

青空文庫

六

この木綿糸の水を含む特質、是と肌膚の抵抗力とは、どうも関係がありそうなのである。

六

欧羅巴人の経験した一つの悲しむべき失敗は、太平洋の島々においてはすでに承認せられている。あのフィリッピンの婦人の着物で見るような寒冷紗というものが行われてから、かなり土人の体力を弱めている。この方面の伝道師には英国人が多いが、英人でなくともこういう地位の人は物固い。彼らの本国では夏が乾燥しているから、私らでも三十五六度という暑い日に、袷服を着てあるき扇などは忘れていた。裸の人などは見る機会の無い国が多い。女はなおさらで夫にすら見せないという人が幾らもあった。したがってその裸体を非常に嫌い、牧師の夫人たちが率先して、この寒冷紗をはやらせたのである。それは土人もむしろ悦ぶところで、現在はもうよほど多くの島に、この風が一般化しているのだが、一つ困ったことには彼らはそれを着たり脱いだりすることに馴れない。たとえば夕立が降ってずぶ濡れになっても、なお裸の時代と同様にごろりと寝転んで乾かそうとする。千九百十八九年の西班牙風邪の流行に、急性肺炎に罹って死ぬ者が多く、時としては一部落が根こそげ滅びたというなどの、原因は是かららしいということは白人の調査委員も認めている。