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もめんいぜんのこと

木綿以前の事

柳田 国男

木綿以前の事「女性」1924(大正13)年10月、何を着ていたか「斯民家庭」1911(明治44)年6月、昔風と当世風「彰風会講演」1928(昭和3)年3月、働く人の着物「旅と伝説」1936(昭和11)年7月、国民服の問題「被服」1939(昭和14)年5月、団子と昔話「ひだびと」1936(昭和11)年3月、餅と臼と擂鉢「社会経済史学」1934(昭和9)年1月、家の光「家の光」1926(大正15)年2月、囲炉俚談「文学」1935(昭和10)年3月、火吹竹のことなど「知性」1939(昭和14)年4月、女と煙草「ひだびと」1939(昭和14)年2月、酒の飲みようの変遷「改造」1939(昭和14)年2月、凡人文芸「短歌研究」1934(昭和9)年2月、古宇利島の物語「短歌民族」1933(昭和8)年5月、遊行女婦のこと「俳句研究」1934(昭和9)年4月、寡婦と農業「農業経済研究」1929(昭和4)年10月、山伏と島流し「俳句講座」1932(昭和7)年8月、生活の俳諧「第一高等学校講演」1937(昭和12)年12月、女性史学「実践女学校講演」1934(昭和9)年7月、女性史学「民間伝承」1936(昭和11)年3月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 177,586 字 · 348 页

青空文庫

七

勿論そんなら是からは乾物ばかりをかじり、夏は裸で学校にも出ることにしようなどと、そんな無茶なことを申すのではない。本に復れと言っても文化は複合している。或る部分だけを切離して、木綿以前にもなれないことはよく判っている。ただ私の言うのは是からの社会対策には、あらかじめ知ってかからねばならぬ歴史が多く、それが今日はまだ荒野のままに、置かれているということだけである。

七

政治上のいつでも大きな問題は、結局は貧乏物語に帰着する。貧の原因は複雑を極めていて、その根本の法則というものを、突詰めたところに持って行こうとする人もすでに多い。それは仮に疑いの無いことだとしても、なおそのたった一つの原因を除き去ることによって、貧を絶滅することができるとは思えないわけは、これを取巻いて今はまだ茫漠たる未知の歴史があるからである。日本の人口は明治の初めから、僅か七十年足らずで倍以上になった。それ以前にもそれほど増加が著しくないというのみで、よほど大きな天災や戦争があっても、やはり少しずつは人が殖えている。この総数が減らないために、国民が全体で平らに繁栄してきたように、ちょっとは考えられるけれども、それはどうも事実でなかったようである。