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もめんいぜんのこと
木綿以前の事
柳田 国男
木綿以前の事「女性」1924(大正13)年10月、何を着ていたか「斯民家庭」1911(明治44)年6月、昔風と当世風「彰風会講演」1928(昭和3)年3月、働く人の着物「旅と伝説」1936(昭和11)年7月、国民服の問題「被服」1939(昭和14)年5月、団子と昔話「ひだびと」1936(昭和11)年3月、餅と臼と擂鉢「社会経済史学」1934(昭和9)年1月、家の光「家の光」1926(大正15)年2月、囲炉俚談「文学」1935(昭和10)年3月、火吹竹のことなど「知性」1939(昭和14)年4月、女と煙草「ひだびと」1939(昭和14)年2月、酒の飲みようの変遷「改造」1939(昭和14)年2月、凡人文芸「短歌研究」1934(昭和9)年2月、古宇利島の物語「短歌民族」1933(昭和8)年5月、遊行女婦のこと「俳句研究」1934(昭和9)年4月、寡婦と農業「農業経済研究」1929(昭和4)年10月、山伏と島流し「俳句講座」1932(昭和7)年8月、生活の俳諧「第一高等学校講演」1937(昭和12)年12月、女性史学「実践女学校講演」1934(昭和9)年7月、女性史学「民間伝承」1936(昭和11)年3月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 177,586 字 · 348 页
九
前代文芸に対する我々の態度は改められなければならぬ。判らぬ部分のあることは覚悟するがよいのであるが、それもだんだんに小さくしてゆく見込はある。とにかくに作者彼らの境涯に入って見ようとすること、是が時代を知る一つの要訣である。
九
学問としての文芸理解は、決して近頃になって始めて唱えられたものではない。或る種の新たなる文芸の、特に一つの時代一つの国に起こらねばならなかった事情、それが民衆の過去生活のいかなる部分を表現しているかということを、尋ね究めようとした人は江戸の町学者の中にも幾人かあった。事業があまりにも断片的であるために、随筆などといって軽んぜられているが、京伝や種彦のいくつかの著述は先駆であって、同じ態度を一段と精透に、進めて行ったのが喜多村節信、すなわち『嬉遊笑覧』『画証録』『庭雑考』などの著者である。当然風雅の間に歯せられなかった市井人の以前の生活を、古い文芸の偶然なる記録の中から、探し尋ねてみようとした熱情は多とすべきであるが、なおその題目の都府に偏し、弘く農漁の生活に及ばなかったのは欠点であった。その上にあれほど多くの文献を渉猟したにもかかわらず、あまり時代が近いために、同じ方法を芭蕉翁の俳諧には及ぼさなかったのである。