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もめんいぜんのこと
木綿以前の事
柳田 国男
木綿以前の事「女性」1924(大正13)年10月、何を着ていたか「斯民家庭」1911(明治44)年6月、昔風と当世風「彰風会講演」1928(昭和3)年3月、働く人の着物「旅と伝説」1936(昭和11)年7月、国民服の問題「被服」1939(昭和14)年5月、団子と昔話「ひだびと」1936(昭和11)年3月、餅と臼と擂鉢「社会経済史学」1934(昭和9)年1月、家の光「家の光」1926(大正15)年2月、囲炉俚談「文学」1935(昭和10)年3月、火吹竹のことなど「知性」1939(昭和14)年4月、女と煙草「ひだびと」1939(昭和14)年2月、酒の飲みようの変遷「改造」1939(昭和14)年2月、凡人文芸「短歌研究」1934(昭和9)年2月、古宇利島の物語「短歌民族」1933(昭和8)年5月、遊行女婦のこと「俳句研究」1934(昭和9)年4月、寡婦と農業「農業経済研究」1929(昭和4)年10月、山伏と島流し「俳句講座」1932(昭和7)年8月、生活の俳諧「第一高等学校講演」1937(昭和12)年12月、女性史学「実践女学校講演」1934(昭和9)年7月、女性史学「民間伝承」1936(昭和11)年3月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 177,586 字 · 348 页
三
三
歴史が是らの難問題を、すべて解決してくれるものとは断言することはできない。しかし判らぬこと説明が付かぬという事実には、必ず隠れたる原因があり、その原因は必ずみな今よりは前にある。すなわち歴史のいまだ書かれざる巻々である。女がそれを見つけ出し得るとも無論きまらないが、実は今まで彼女らが、あまりにこの方面に無関心だったお蔭に、特にその手近だけに、多くの大切な暗示がまだ残っておりそうなのである。だから新たにその持前の細微な注意力をもって、捜そうとすれば大いに見つかるかも知れぬのである。しかしただ勉強して本を読み、本に教えてもらおうとしても失望する。書物は大抵が男の手に成り、彼らに合点の行くことまでしか書いていないからである。そういう私とても男だから、この男の言うことも只御参考にしかなるまいが、おおよそ人間の作り上げた世の中ほど、込み入っている組織は他には無い。事実は明白だなどと言ってすましていることでも、近よって細かに見ると、思いがけぬ原因が蔭の方から糸を引いている場合が毎に多い。少なくとも我々の今もつ人間知識では、ほんの片端しか問題の綾は解けていないものが多いのである。