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もめんいぜんのこと
木綿以前の事
柳田 国男
木綿以前の事「女性」1924(大正13)年10月、何を着ていたか「斯民家庭」1911(明治44)年6月、昔風と当世風「彰風会講演」1928(昭和3)年3月、働く人の着物「旅と伝説」1936(昭和11)年7月、国民服の問題「被服」1939(昭和14)年5月、団子と昔話「ひだびと」1936(昭和11)年3月、餅と臼と擂鉢「社会経済史学」1934(昭和9)年1月、家の光「家の光」1926(大正15)年2月、囲炉俚談「文学」1935(昭和10)年3月、火吹竹のことなど「知性」1939(昭和14)年4月、女と煙草「ひだびと」1939(昭和14)年2月、酒の飲みようの変遷「改造」1939(昭和14)年2月、凡人文芸「短歌研究」1934(昭和9)年2月、古宇利島の物語「短歌民族」1933(昭和8)年5月、遊行女婦のこと「俳句研究」1934(昭和9)年4月、寡婦と農業「農業経済研究」1929(昭和4)年10月、山伏と島流し「俳句講座」1932(昭和7)年8月、生活の俳諧「第一高等学校講演」1937(昭和12)年12月、女性史学「実践女学校講演」1934(昭和9)年7月、女性史学「民間伝承」1936(昭和11)年3月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 177,586 字 · 348 页
七
七
例を述べていると際限も無い話だが、要するに我々の生活方法は、昔も今も絶えず変っていたもので、また我々の力で変えられぬものはほとんと一つも無いと言ってよい。老人の頻りに愛惜する昔風は、いわば彼ら自身の当世風であって、真正の昔風すなわち千年に亘ってなお保たるべきものは、むしろ生活の合理化単純化を説くところの、今後の人々の提案の中に含まれているのかも知れぬ。またこの民族の永久の栄えのために、自分はしかあらんことを望むのである。勿論美を愛する人の情、ないしは少々のムダをすることに因って、味わうことのできる心の安さなども、個人の幸福のためには決して無視することを得ないが、それよりも大切なのは一の群としての国民の進歩である。今の智慮あり趣味ありまた感化力ある人たちの、気儘な傾向のみに任せておいて、はたして常に世の中が善くなるとはきまっておらぬ。それには前に申した分配方法の不当である。消費方法の拙劣である。選択の失敗である。これらがすでによほど大きな損害を国民に与えている。体質の衰退は独り金歯に由って知るのみではない。かつて或る時代の各人が一かどの改良なりと信じて世に行った変革の結果が、その実我々に災いした場合は一にして止まらぬ。