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もめんいぜんのこと

木綿以前の事

柳田 国男

木綿以前の事「女性」1924(大正13)年10月、何を着ていたか「斯民家庭」1911(明治44)年6月、昔風と当世風「彰風会講演」1928(昭和3)年3月、働く人の着物「旅と伝説」1936(昭和11)年7月、国民服の問題「被服」1939(昭和14)年5月、団子と昔話「ひだびと」1936(昭和11)年3月、餅と臼と擂鉢「社会経済史学」1934(昭和9)年1月、家の光「家の光」1926(大正15)年2月、囲炉俚談「文学」1935(昭和10)年3月、火吹竹のことなど「知性」1939(昭和14)年4月、女と煙草「ひだびと」1939(昭和14)年2月、酒の飲みようの変遷「改造」1939(昭和14)年2月、凡人文芸「短歌研究」1934(昭和9)年2月、古宇利島の物語「短歌民族」1933(昭和8)年5月、遊行女婦のこと「俳句研究」1934(昭和9)年4月、寡婦と農業「農業経済研究」1929(昭和4)年10月、山伏と島流し「俳句講座」1932(昭和7)年8月、生活の俳諧「第一高等学校講演」1937(昭和12)年12月、女性史学「実践女学校講演」1934(昭和9)年7月、女性史学「民間伝承」1936(昭和11)年3月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 177,586 字 · 348 页

青空文庫

一九

一九

時間が足らなくなって、もう一つの肝要な問題を詳しく説くことができないが、この女性の忠言というものは、少なくとも我邦ではもとは甚だ価値の高いものであった。内に隠れての援助だけではなく、外に対する場合にも、女はかなりよく夫の相談相手になっている。勿論ただ牝鶏の晨するのではなしに、或る範囲の承認せられたる任務があったのである。古代日本人の間においては、女は一段と神に近くまた一段と祖先の霊に親しいものと認められていた。単なる女一生の経験だけからは、発言することのできぬ問題でも、或るものは先例の確かな記憶により、また或るものは神秘なる神の告げに基づいて、しばしば迷うている男たちを頓悟させ啓発せしめた事跡は、記録には載らぬのを原則とするが、しかも相応に記録せられている。是も元来は酒と同様に、家の内の労働の所産であったものが、後々専門の職業が外にできたのに譲って、幾つかの弊を生じたことは、「巫女考」という長い論文で、前に私も述べてみたことがある。神託霊示はこれを信じない者には、笑うべき空言として軽んぜられるのは已むを得ぬが、しかも今日の合理的科学から考えても、女性のこの忠言の裏には、誠実なる援助心と無意識の人生経験とがあったはずで、そのためにまたしばしば家の生活指針に役立ったのである。