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もめんいぜんのこと
木綿以前の事
柳田 国男
木綿以前の事「女性」1924(大正13)年10月、何を着ていたか「斯民家庭」1911(明治44)年6月、昔風と当世風「彰風会講演」1928(昭和3)年3月、働く人の着物「旅と伝説」1936(昭和11)年7月、国民服の問題「被服」1939(昭和14)年5月、団子と昔話「ひだびと」1936(昭和11)年3月、餅と臼と擂鉢「社会経済史学」1934(昭和9)年1月、家の光「家の光」1926(大正15)年2月、囲炉俚談「文学」1935(昭和10)年3月、火吹竹のことなど「知性」1939(昭和14)年4月、女と煙草「ひだびと」1939(昭和14)年2月、酒の飲みようの変遷「改造」1939(昭和14)年2月、凡人文芸「短歌研究」1934(昭和9)年2月、古宇利島の物語「短歌民族」1933(昭和8)年5月、遊行女婦のこと「俳句研究」1934(昭和9)年4月、寡婦と農業「農業経済研究」1929(昭和4)年10月、山伏と島流し「俳句講座」1932(昭和7)年8月、生活の俳諧「第一高等学校講演」1937(昭和12)年12月、女性史学「実践女学校講演」1934(昭和9)年7月、女性史学「民間伝承」1936(昭和11)年3月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 177,586 字 · 348 页
十四
私を案内してくれた老村長は曰く「あれは未来の夫に贈る帯を織っているのです。あれをもらうのが私たちも嬉しかったものです」と謂った。この村長さんは今七十幾つになって丈夫でおられる。是などは単に一本の帯を織るというだけでなく、その中には中世京都の貴婦人淑女たちが、かつて優雅なる三十一文字によって、表現していたような情熱と感覚とを、織り込もうとしていたものと思われるのである。
十四
働く日の多かった以前の女たちは、晴着はただ紺や花色の無地にしても、その労働服だけは夙くから派手なものを好んでいた。五月田植の日の支度などは、近世は白い菅笠に紅い襷をかけ、桔梗染めの手拭などを被り、着物は紺絣の単衣を着ていたが、その一つ前には布に白糸の刺繍などをしたようである。肩裾と称して、芝居で見る熨斗目の着物などとは反対に、わざわざ肩と裾の部分を縫取りして丈夫にしたのである。その風が遠い田舎にはまだ伝わっていて、秋田地方ではこれをチヂミサシ、津軽は一般にこれをコギンと謂っている。コギンは小衣、すなわち労働の時に着る短い衣服のことであって、土地によってはまたコギノともコイノとも謂い、中央部はもとより九州地方までも共通した地方語である。