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もめんいぜんのこと
木綿以前の事
柳田 国男
木綿以前の事「女性」1924(大正13)年10月、何を着ていたか「斯民家庭」1911(明治44)年6月、昔風と当世風「彰風会講演」1928(昭和3)年3月、働く人の着物「旅と伝説」1936(昭和11)年7月、国民服の問題「被服」1939(昭和14)年5月、団子と昔話「ひだびと」1936(昭和11)年3月、餅と臼と擂鉢「社会経済史学」1934(昭和9)年1月、家の光「家の光」1926(大正15)年2月、囲炉俚談「文学」1935(昭和10)年3月、火吹竹のことなど「知性」1939(昭和14)年4月、女と煙草「ひだびと」1939(昭和14)年2月、酒の飲みようの変遷「改造」1939(昭和14)年2月、凡人文芸「短歌研究」1934(昭和9)年2月、古宇利島の物語「短歌民族」1933(昭和8)年5月、遊行女婦のこと「俳句研究」1934(昭和9)年4月、寡婦と農業「農業経済研究」1929(昭和4)年10月、山伏と島流し「俳句講座」1932(昭和7)年8月、生活の俳諧「第一高等学校講演」1937(昭和12)年12月、女性史学「実践女学校講演」1934(昭和9)年7月、女性史学「民間伝承」1936(昭和11)年3月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 177,586 字 · 348 页
この両面からの攻撃はかなり痛くまた強いものであるが、しかも今日の生活改善論者のごときは、かえって勇敢且つ積極的に、右二種の武器を逆に利用して、昔風の必ず変更せざるべからざる理由を主張しようとするのである。これいわゆる追風に帆を懸け、流を下るにモーターを使うがごときもので、是ではもはや相手方に口をきかせる余地もなく、その功を収むるの易々たるは当然のように思われる。趣味からいっても今の方がいい。経済から見ても此方が有利とすれば、この上に昔風論者の反対する根拠は無いわけだからである。
ところで実際の成績はどうかというと、それが必ずしも理論通りではないのであった。諸種の考案は競い進み、甲乙流行の変化ばかりが烈しく、都市生活は是がために最も乱雑となった。例えば衣服一つだけについて見ても、汽車や電車の乗合、その他若干の人の集りに行けば、髪から履物から帯から上衣まで、ほとんと目録を作ることも不可能なる種類がある。勿論是も面白い世の中といえば言える。いわゆる二重三重生活は我々の単調なる存在から、退屈という畏ろしい悪魔を追い攘う効力はある。しかしながら少なくともこの無定見は、同朋多数の国民を平和静穏の世界に導いて行く道ではない。