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えどさんごくし

江戸三国志

吉川 英治

「報知新聞」報知社、1927(昭和2)年10月~終号未詳

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 577,271 字 · 1141 页

青空文庫

てあばれ廻る。

この向う見ずな二人には、多勢の捕手もスッカリ手を焼いた形で彼方の川洲、此方の露地、或いは狭い横丁から浜町の屋敷地にまで引き摺り廻された揚句、果ては組々の人数もちりぢりになって、とうとうどこかへ取逃がしたのは、諦められない忌々しさでしょう。

その頃はもう、とっぷりと陽が暮れて、大川を隔てた深川の屋根の上から、黄色い宵月が顔を出しています。

その反映が箱崎川の枝河にまで射し込んで、脚の高い女橋の杭の裏まで仄明るく見えたかと思いますと、守宮のように、橋の裏に取ッ付いていた二人の男が、

「驚いたなあ、雲霧」

「まったく不意を食らわしゃアがった。前から気振りでもあれば、少しは覚悟のしようもあるのに」

「どうだろう、もうボツボツ出かけて見ようじゃねえか」

こんな事を言い合っていたかと思いますと、杭を伝わって、石垣から、橋の袂へそっと顔を出して、

「いいか?」

「よし」と一方に眼くばせしながら、ひらりと陸へ飛び上がりました。

「困ったなあ、天蓋を吹ッ飛ばしてしまった」

「おれは尺八を何処かへ落としてしまったぜ」

「どうせ偽者だからしかたがねえや」

「おい、待ちねえ。