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えどさんごくし
江戸三国志
吉川 英治
「報知新聞」報知社、1927(昭和2)年10月~終号未詳
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 577,271 字 · 1141 页
柳沢吉保
柳沢美濃守吉保の封ぜられている甲府城の外濠。
その外濠から遠からぬ同心町の辻に、折助や御用聞きなどが油をうるに都合のいい西瓜売りの縁台が二、三脚すえてあって、
「おい仁三、仁三兄い――」
と声を立てた連中も、両手で輪切りの大きなのを一ツずつ抱えこんで、盛んにそこらを核だらけにしているところです。
「やあ」
一文字笠のつばを振顧った男は、一方の目を布でふさいでいました。
そこで、呼びとめた方の連中はといえば、これは尺取の十太郎、千束の稲吉、四ツ目屋の新助の三人づれで、どれもこれも、まだ草鞋を解いていない様子をみると、例の暗殺の目あてをもって、この甲府へ入り込んで来る途中、期せずして落合ったものと思われます。
「どうしたい、雲霧」
「おれよりはおめえ達こそ、どうしてこんな所にガン首をそろえているのだ」
「まあ、そこへ腰かけねえ」
「おれも早速一つもらおうか」
「何を」
「西瓜のつきあいさ」
「とっさん、もう一つ割ってくんな、その甘そうなやつを」
「何しろ、今朝は早立ちで、今までに七里も飛ばして来たんだから、のどが渇いてたまらねえ」
雲霧は話をそッちのけにして取りあえず大きな切れを一息に食い終って、