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えどさんごくし
江戸三国志
吉川 英治
「報知新聞」報知社、1927(昭和2)年10月~終号未詳
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 577,271 字 · 1141 页
謎
飛鳥! 屋根から袋地へ飛び下りました。
「ああ、凄い奴だ――」
茫然と、下げた抜刀もそのままに、時に徳川万太郎は、あとに残って再び四顧を見渡しますと、雲霧の仁三、四ッ目屋の新助、いずれも素早い上に腕達者な曲者、遂に、一方を破って逃げたものでしょうか。
浄音寺から水門尻へわたる捕手明り半円の灯の陣は、今、三枚橋と下谷の二手へ列を乱して、吹かるる螢の如く散々に追って行きます。
そして、あとの袋地には、何かわめくお人よしの率八の声が、泣くが如く訴たうるが如く聞こえますから、大山鳴動して鼠のたとえにもれず、かくまで用意した釘勘の手配も、召捕ったのは雑魚の率八で、大魚は遂に網にかからず、目ばかりいたずらに血走らして、むなしい明け方にガッカリした疲れを見合う、十手商売の苦味を今朝も舐めねばなりますまい。
謎
どこを毎日遊んで廻るのか、不良少女の混血児お蝶は、派手に着かざった身なりをして、相変らず二官に口実をもうけては出歩いている。
今日も。
かの女の姿が丹下坂に戻って来たのがもう夕方――。あたりの藪に笹鳴きの声がさびしく、山屋敷の塀越しに、紅梅の花が黒く見えます。