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えどさんごくし

江戸三国志

吉川 英治

「報知新聞」報知社、1927(昭和2)年10月~終号未詳

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 577,271 字 · 1141 页

青空文庫

「姐御、迎えにまいりましたぜ」

のび上がって家の中へ――

「支度はできていましょうね。へえ、率八でございます。昼間打合せに来た率八がお迎えにまいりましたんで、いつもと違って今夜はだいぶ捕手の配りが厳重だから、とても姐御ひとりでは逃げきれまいと――親分も心配して、ここへ雲霧の兄哥と四ツ目屋の新助も一緒に参っておりますから、支度がよかったらすぐ裏口の方から……」

合図をして問わず語りにしゃべり出したのを聞くと、釘勘は家の中で、

「しめた」

と、明りを吹き消し万太郎の耳へ、

「いよいよやって来たらしゅうございます……」

「お、日本左衛門が?」

と驚いた様子で、万太郎も思わず腰を上げました。

「そうです。高飛びの行きがけに、ここへ、乾分の者と一緒にお粂を迎えに来たんです」

「しかし、そのお粂は、もうここにはおらぬと申したが」

「賊でも日本左衛門は首領と立てられるくらいな人物、仲間の者の手前、お粂と金吾のことは見て見ない振りをしているんですが、お粂は男を見捨てきれないで、夕方のうちに二挺駕を仕立てて何処かへ逐電してしまっているのです」

「ではその駕の一挺の方には、金吾が乗っていたわけじゃの。