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えどさんごくし
江戸三国志
吉川 英治
「報知新聞」報知社、1927(昭和2)年10月~終号未詳
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 577,271 字 · 1141 页
「どうも、只今は、とんだお見それをいたしまして」
おそるおそるそれへあいさつに来た男を見ると、今、啖呵を切ッた博労ですから、三人は苦笑いをして、
「さ、こちらへお掛けなさい」
「ところで、何かあっしにお話があるそうですが」
日本左衛門は、博労の男にも床几を与えて、
「呼び立てて聞きただす程のことでもないが、そちが只今、向うで話していた女影の妖女のうわさは真実なのか」
「へ、へい。こればかりは、嘘でも大袈裟でもございません」と、博労が得意になって語り直すのを、日本左衛門がところどころ反問して、どうやらそれで彼の疑問は頷けたようであります。
「いやよく分った。折角飲んでいるところを済まなかったな、これは少ないが……」
と、呆っ気にとられる博労の男の手へ、一枚の小判を落として、三人はぶらりと外へ出て行きました。
外の風に吹かれると、すぐ耳につくのは池の向こうの掛小屋の鳴物です。どんよりした夕雲の影を落としている蓮池の水面に、水馬がツイツイと細い線を描いているのが、何となく夜の雨でも待つように見えました。
暫く肩をならべて行ったと思うと、日本左衛門と金右衛門とは、別な道へそれて行きながら、