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えどさんごくし

江戸三国志

吉川 英治

「報知新聞」報知社、1927(昭和2)年10月~終号未詳

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 577,271 字 · 1141 页

青空文庫

「やはり、その質物の御用でございました。……古渡りの珊瑚の珠、帯止めや何かの金銀もの、それに着ているお召物など、身のまわりの物そッくりお預かりいたしまして、その代りに、手前どもの流れ物で、お間に合いになる柄合のお召衣や帯をさし上げました次第で、はい」

「ふーむ、妙な事をして行ったな」

「それがその……嘘か真実か存じませんが、道中で路銀を失くしたので困るから、身の周りの物を払って、差引きの代金が欲しいというお話。――で、お髪のものや何やかや細工類に金目なものがございましたので、剰余り金拾一両二朱ほどお渡しいたしました」

久米之丞は心のうちで、もうてッきり鍛冶小屋に泊った女と見極めをつけて、なお膝をすすめながら、

「して亭主。その節、衣類などのほかに、何かまた別な品物を質入れいたしはせぬか、その女が」

「と申しますと? ……どんな品物でございますな」

「されば、ここにおられるお嬢様のお屋敷から、故あって人に持ち出された、出目洞白の鬼女の仮面だ」

「仮面?」

と、亭主はびッくりした顔をして、

「そういうお品物は、お預かりも致しておりませんし、その節お召し更えなさいました時も、お持ちになっているようには見えませんでしたが」