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えどさんごくし

江戸三国志

吉川 英治

「報知新聞」報知社、1927(昭和2)年10月~終号未詳

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 577,271 字 · 1141 页

青空文庫

次郎は俄然身を跳らせながら、しかもいい気に調子づいて、

「待て、侍」

と、野槍をすぐって追いかけんとしましたが、またも、先へ駆け出した金右衛門が、不意に暗やみから伸び出た一本の刀に出会って、サッと、その出足の真っ向を割りつけられました。

すると、一方の暗で、

「あっ、万太郎様万太郎様、そいつを斬ってはいけません」

と、はっきりした声でいうものがある。

で、次郎は初めて、相手の急敗が自分の勢力や圧倒でなかったことに気づき、いささか失望の気味で、

「あれ?」

と言ったまま野槍を小脇におさめている。

無論そこへ来たのは、彼が半日がかりで探した釘勘と万太郎です。三人はこの事にさえ出会わなければ、予定どおり、夜を徹して小仏を越えてしまったでしょう。

ところが。

ここまで来ると、昼間甘酒茶屋に何か包を頂けてあるからというので、次郎がそれを取りに寄ったので、一足あとから歩いて来ると、彼と金右衛門とがこの有様なので、咄嗟の急に釘勘は捕繩を送り、万太郎は向うから来るところを、得たりと抜き打ちに、その真眉間へ浴びせつけたのでした。

そして、すぐ二太刀と思うはずみを、何故か釘勘が制止したので、例のお坊ちゃん気質はすぐにその干渉へ、