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みやもとむさし

宮本武蔵(五)

吉川 英治

吉川英治『宮本武蔵(五)』。同一底本的分册已合并为一书。收入:宮本武蔵、宮本武蔵。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 508,883 字 · 1017 页

青空文庫

源次郎は吉岡家の跡目相続人でもあれば、その者を立てるが、まだ年端もゆかぬ少年ゆえ、門弟何名かが、介添として立合いにつくということ……それも念のため申しておくぞ」

相互の約束を取り決めると、小次郎はそこの木挽小屋の戸をたたき、中へはいって行って、戦いている二人の木挽に命じた。

「そこらに、なんぞ不用な板ぎれがあろう。高札に建てるのじゃ、程よくひいて、六尺ほどの棒杭に打ちつけてくれい」

木挽が板をひいて出すと、小次郎は吉岡の者を走らせて、どこからか筆墨を取り寄せ、達筆を揮って、それへ果し合いの主旨を書いた。

相互に神文を取交わすより、これを往来に建てることは、絶対な約束を天下へ公約することになる。

吉岡側の手で、それが最も人目につきやすい辻へ打ち建てられるのを見届けて、武蔵は他人事のように、柳の馬場のほうへ足を早めて立ち去った。

八

ぽつねんと、柳の馬場に、武蔵が来るのを待っていた城太郎は、

「遅いなあ」

幾度か、嘆息して、広い闇を見まわしていた。

駕の灯りが駈けてゆく。

酔っぱらいの唄がよろけてゆく。

「――おそいぞ、ほんとに」

もしや? という不安が彼にもないではない。