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もめんいぜんのこと

木綿以前の事

柳田 国男

木綿以前の事「女性」1924(大正13)年10月、何を着ていたか「斯民家庭」1911(明治44)年6月、昔風と当世風「彰風会講演」1928(昭和3)年3月、働く人の着物「旅と伝説」1936(昭和11)年7月、国民服の問題「被服」1939(昭和14)年5月、団子と昔話「ひだびと」1936(昭和11)年3月、餅と臼と擂鉢「社会経済史学」1934(昭和9)年1月、家の光「家の光」1926(大正15)年2月、囲炉俚談「文学」1935(昭和10)年3月、火吹竹のことなど「知性」1939(昭和14)年4月、女と煙草「ひだびと」1939(昭和14)年2月、酒の飲みようの変遷「改造」1939(昭和14)年2月、凡人文芸「短歌研究」1934(昭和9)年2月、古宇利島の物語「短歌民族」1933(昭和8)年5月、遊行女婦のこと「俳句研究」1934(昭和9)年4月、寡婦と農業「農業経済研究」1929(昭和4)年10月、山伏と島流し「俳句講座」1932(昭和7)年8月、生活の俳諧「第一高等学校講演」1937(昭和12)年12月、女性史学「実践女学校講演」1934(昭和9)年7月、女性史学「民間伝承」1936(昭和11)年3月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 177,586 字 · 348 页

青空文庫

昔は学問のことを勉強と謂っていた。何か一つの目的のために、強いて勉めて我慢をして学問をしたのであった。多くは新たなる職業のためであった。家々の灯火が明るくなってから、そんな必要の無い人も、楽に世の中のためにまたは愛する者のために、静かな時間を読書に費すことができるのである。

人が自分に入用なだけの学問を、勉強して修めている間は、まだ人間社会の全体を、これに由って改良する見込みは立たぬ。少しでも余裕の有る者が、他を助ける心持で、本を読みまた考えるようにならなければ、次の代は今よりも幸福にはならぬのである。

大抵の家の主人は、生活の仕事が非常に忙しくなった。世の中もすでに行詰まって、棄てておいても自然に繁栄するほどに有望でない。正しい学問ばかりが国を済うことを得るのであるが、現在まではまだ誰が出てその任務に当るという者も無かった。そうして人は個々の奮闘に疲れようとしている。

幸いにして彼らの家庭には余った力があり時間があり、親切と愛情とがある。またこれを照すところの明るく美しい家の光がある。どうしても今後の学問は、家庭に入らなければならぬ。

或いは家々の事情に由って、その余裕のないという場合があろう。