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もめんいぜんのこと

木綿以前の事

柳田 国男

木綿以前の事「女性」1924(大正13)年10月、何を着ていたか「斯民家庭」1911(明治44)年6月、昔風と当世風「彰風会講演」1928(昭和3)年3月、働く人の着物「旅と伝説」1936(昭和11)年7月、国民服の問題「被服」1939(昭和14)年5月、団子と昔話「ひだびと」1936(昭和11)年3月、餅と臼と擂鉢「社会経済史学」1934(昭和9)年1月、家の光「家の光」1926(大正15)年2月、囲炉俚談「文学」1935(昭和10)年3月、火吹竹のことなど「知性」1939(昭和14)年4月、女と煙草「ひだびと」1939(昭和14)年2月、酒の飲みようの変遷「改造」1939(昭和14)年2月、凡人文芸「短歌研究」1934(昭和9)年2月、古宇利島の物語「短歌民族」1933(昭和8)年5月、遊行女婦のこと「俳句研究」1934(昭和9)年4月、寡婦と農業「農業経済研究」1929(昭和4)年10月、山伏と島流し「俳句講座」1932(昭和7)年8月、生活の俳諧「第一高等学校講演」1937(昭和12)年12月、女性史学「実践女学校講演」1934(昭和9)年7月、女性史学「民間伝承」1936(昭和11)年3月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 177,586 字 · 348 页

青空文庫

是には誠に柳田なる者も返答に困った。と申すわけは、我々が今のようなペチャンコの坐りかたを始めたのは、どうも三四百年より古くはないらしいからである。「すわる」は「ひざまずく」の次の改良であって、跪くのは身分の低い者が、長者の前に奉仕する礼儀であり、同時に外敵警戒と臨時活動の準備であった。これがいわゆるサムラフ形である。サムラヒの階級が一世に充満してこの方法が上下に行き渡り、それが太平に入って平和の閑暇を味わうべく、今日のように爪立てていた足の尖を伸べて、ヰシキの下に敷くに至って、ついに今一つ以前の坐礼を忘れてしまい、オラクニヰルことをもって欠礼と感ずるようになったのである。日本魂の方が確かにそれよりも古くからの記憶である。

また牀の上に畳を敷きつめることも、勿論神武天皇以来の風ではない。たたみは文字通り畳むもの、すなわち今日のゴザまたはザブトンに該当する。八重だたみというか高だたみと謂うか、百人一首の「天神さま」の乗っている畳も、古くから有ったことは有ったが、座敷と称してこれを室一杯に敷きつめることは、御殿においてもほんの近世からの出来事である。現在のようにあの畳の上を摺り足して、堪えず足の垢をこすりつけ、その上へ板のごとき脚なし膳をすえ並べて、なるだけ塵の多く載っかった物を食おうとする流行などは、まったく