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えどさんごくし
江戸三国志
吉川 英治
「報知新聞」報知社、1927(昭和2)年10月~終号未詳
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 577,271 字 · 1141 页
「どんなお化けだか知らないけれど、思わせぶりばかりしていないで出ておいで。山屋敷の人を呼んでやるから」
いずれ首番の非人か、この辺に、菰をかぶっている宿なしの悪戯であろうと、試しにこう強く出てみると、
「なるほど、胆ッ玉の太い娘だ、これじゃ龍平が一杯食ったのも無理はねえ」
ぞろぞろと三人の男。
椿の蔭、橋のたもと、三方から現われて来てお蝶の前後を取りかこみ、
「おれ達だよ」
豆絞りの頬かむりを各脱って、化け物に縁の遠くない面がまえをつン出していやがらせる。
「ああお前たちは、先頃、山屋敷をお暇になった小屋番の仲間だね」
「そうよ、龍平たあ生きてるうちから兄弟分にしている仲間の源六、松、権次のお三人様だ」
「御参詣でいらっしゃいますの?」
「なにを」
「朋輩がこんな浅ましい姿になっているので、お詣りに来て上げたんじゃないんですか」
「な、なにを言ってやがるんで」
法被の袖をまくり上げて――
「てめえの帰るのを待ち伏せしていたんだ。さ、今日は少し取ッちめて、聞く筋があるんだからおれ達と一緒に来い」
「聞くことがあるなら仰っしゃいな。よそへ行くことはありゃしない」
「うぬ、素直にしねえな」