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えどさんごくし
江戸三国志
吉川 英治
「報知新聞」報知社、1927(昭和2)年10月~終号未詳
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 577,271 字 · 1141 页
そいつアでかした、御苦労御苦労」
と、これは釘勘としても予期以上の上首尾らしく、ひどく機嫌のよい調子で伝吉の気転をねぎらいました。
しかし、その声を聞いただけで、もうハッとして胸を衝かれたのは相良金吾。
面目ない!
思えば釘勘とここに会うのは沙汰の限りな恥かしさです。彼とは聖天の盗っ人市で別れて以来でありますが、主人万太郎の意思をうけて自分を迎えに来たとすれば、すべての事情は知っていよう。
ああ、どの面下げて――
金吾は杉の幹に両手を支えて、鷺のように、肩の間へ深くその不面目な顔をさしうつ向けている。
――その姿へいきなり物をいうには耐えないで、釘勘も、しばらく無言でいましたが、
「オオ……」と気がついたように――「伝吉、おめえはまた御苦労だが、もしやお粂があとで感づいてここへやって来ると少し工合がわるいんだが、どこか途中で、見張っていてくれねえか。おれは少しここで、金吾様に御相談があるんだから」
「ええ、よろしゅうございます」
「頼んだぜ」
「もし、お粂が追いかけて来たらどうしましょうね」
「そうだな? ……」
と、釘勘はちょっと金吾の方へ気がねしながら、