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えどさんごくし

江戸三国志

吉川 英治

「報知新聞」報知社、1927(昭和2)年10月~終号未詳

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 577,271 字 · 1141 页

青空文庫

「こんだあ飛んだ交際をさせてすまなかったな」

「なにさ、どうせ当分は江戸から足を抜いているところ、かえっていい保養をしたというものだ」

「うまいことを言う……」

薄ら笑いをして煙をよけながら、

「だが、今夜なんざ、あまりいい保養にもなるめえが」

「このくらいな義理はしかたがない、友情というやつでな――。しかし日本左衛門、よけいな口を入れるようだが、まあ腹の立つところを抑えて、こんどは一つこらえてやるんだな」

「なにを」

「お粂の始末さ」

「…………」

「おめえの身になってみれば、廓から根びきした後も、色恋はべつとして、あの女にはずいぶん金をかけていたようだから、腹の立つのはもっともだが、誰にも、ひょッと気まぐれというやつはあるもの。まして、水性の女を世話する以上は、こんな苦い事のあるのも前から承知でなくッちゃならねえ。怒るのは野暮というもの、それに、大盗日本左衛門という貫禄を小さくすることにもなる」

「……ありがとう、その忠言に礼だけは言っておく」

「いや、まったく」

「だが、この事だけは、黙ッて見ていてもらいたい。すこしおれにはおれの方寸がある」

「どうしても、おめえはお粂を許さないつもりか」