轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

えどさんごくし

江戸三国志

吉川 英治

「報知新聞」報知社、1927(昭和2)年10月~終号未詳

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 577,271 字 · 1141 页

青空文庫

「たれじゃ」

「猫ではございませぬか」

と見廻していた久米之丞は、突然、顔じゅうに笑みをくずして、

「やあ、お嬢様が」

と、落着かない挙動となる。

なるほど、それへ見えたのは次郎を連れた月江です。衣服を更えて久し振りに、屋敷の湯に浸って化粧を改めた月江の姿は、今旅から帰った人とも見えず、久米之丞にはまぶしすぎる。

「月江、おまえか。今そこの山吹のうしろで何かしていたのは」

と、顔を見るとすぐに、千蛾老人がこう尋ねましたので、月江も次郎も不意をうたれたように、

「いいえ」

と顔を見合せています。

「たれだろうか?」

月江でも次郎でもないとすると、そこの山吹の蔭で、今、二人の密話をぬすみ聞きして逃げた者がほかにあるに違いない。

「おかしいのう……」

と、千蛾は眉をひそめましたが、久米之丞はもうそんな事にこだわりなく、

「さ、月江殿こちらへ」

と、自ら床几の位置を直して、彼女の瞳を待ちましたが、月江はそれへ一暼も与えず、千蛾のそばへ寄って、

「お祖父様、ただ今帰りました」

「おう」と、久し振りの孫娘へまなじりを細めて――「どうじゃッたな、熱海は」

「ほんとに面白うございました。