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えどさんごくし

江戸三国志

吉川 英治

「報知新聞」報知社、1927(昭和2)年10月~終号未詳

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 577,271 字 · 1141 页

青空文庫

やがて、ゆくこと遠からず、間道の突き当りに、七尺ばかりの自然石を畳み上げたところがある。

幾度か出入りしているので、暗にも何の躊躇なく、そこをチョコチョコとはい上がった次郎が、やがて首を出した所は、洞然たる一宇の堂内。

これ、狛家千余年来の守護神であり、また武蔵野に散在する幾多の小さき石神堂の総元の社であります。

しばらく、中のくらやみで、カサコソと音をさせていた次郎が、程なく、

「あった! あった!」

と、つぶやいて、何やら箱のような物を振って見ている。

「これだろうな? ……音がする、音がする」

でも、音だけでは不安になって、念のために箱の紐を解き、逆さにポンと板敷の上へふせると、喜連格子から流れる星明りのかげへ、裏返しの般若の仮面!

ザワザワと、その時、堂の横手で風らしくもない樹木の枝がゆすれました。

「おや?」

と、次郎が耳をたてると、正しくそれは人の足音。

ガサ……ガサ……と横手の樹木をかき分けて来る者があるので、仮面を片手に、喜連格子にのび上がッて、外をさし覗いてみると、泥棒かぶりをした一人の男が、ポンと、堂のぬれ縁へ飛び上がッて、

「なんてえ奥深え屋敷だろう。