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えどさんごくし
江戸三国志
吉川 英治
「報知新聞」報知社、1927(昭和2)年10月~終号未詳
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 577,271 字 · 1141 页
「……ええと、龍王の細刻が一朱で二百五十匁替、国分の舞留が百五十匁替。田舎じゃどうも売りきれねえな」
などと呟いて、店のはり札を読んでいましたが、やがて、
「――じゃあ番頭さん」
と、手代へ向って、
「細かくってすみませんが、秦野の古葉を二十匁、年員の並物を二十匁、甘いところで水府もの少々と蒔田物をまぜて三十匁ばかり。……それから在方売りの『鬼殺し』という甲州葉の辛いやつを五十玉ばかり揃えておくんなさい」
と、注文する。
「秦野の古葉は小出しがしてなくてお生憎様ですが、薩摩じゃ如何でございましょう」
「薩摩はどうも好き嫌いがあって売りにくい。じゃ、天下野にしてもらおうか」
「へい、有難うございます」
品をそろえ、書付に添えてそれへ出す。
男は、首にかけていた財布の紐を解き、品書を見ておりましたが、
「おや……旦那、こりゃあ少し算盤が違ッていやしませんか」
と、草鞋ばきのまま這い上がッて、帳場にいた九兵衛の方へ身をのばしてまいりました。
「え?」
と、初めて、顔を上げた九兵衛。
見ると、渋色の巻頭巾に、たばこ売りとはうまく化けました。それは日本左衛門の手下、四ツ目屋の新助で、