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えどさんごくし
江戸三国志
吉川 英治
「報知新聞」報知社、1927(昭和2)年10月~終号未詳
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 577,271 字 · 1141 页
そこで、この一行も同行異体の集まりです。
中仙道の川口方面へ出るという鋳物商人、大宮へ行くという繭買いの男、野田粕壁地方へ所用でゆく人々、六部、煙草売り、雑多な者の姿が見える。
中で一番あたま数の多い一組は、五日市から八王子を三日ほど興行して、これから中仙道を打ちに廻ろうという旅役者。
それとて、役者らしく見える者はわずか四、五人で、揚羽蝶の漆の紋がはげ落ちた衣裳つづらが荷駄の背に二つばかり、小道具と木戸役らしい男が二人、そして馬の背中の荷物の間にはさまっている艶ッぽい女と。
その婀娜女が、涼しい顔をしている間に、馬子や旅人たちは、寄ッてたかッて、次郎に気付薬を与え、オ――イ、オ――イ、と呼ぶこと二、三度でありました。
ふッと気がつくと、高麗村の次郎は、怪訝な顔をして、幾つもの灯と人と馬の顔を見廻している。
「気がついたか」
「有難う……」
「どうしたんだい、お前は」
「悪い奴にいじめられて、あぶなく殺されるところだったんだ。おいらは、死んだのじゃなかったのかしら」
「人に聞くやつがあるものか。立派に助かっているじゃないか」
「そうだね」
「お前は何処の者だい。