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えどさんごくし
江戸三国志
吉川 英治
「報知新聞」報知社、1927(昭和2)年10月~終号未詳
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 577,271 字 · 1141 页
「明日からこの唐人小路に小屋が開くから、怪我人の容体がよくなったら、ぜひ見物に来て、楽屋へも遊びに来ておくれッて。……そういってくれれば大概わかるよ、それでも分らないようだったら、熱海に居たお粂さんからだといっておくれ」
七男坊
川越城の本丸で、領主の秋元但馬守涼朝が、
「ほウ。……あの尾州家の七男坊がか?」
と、鼻をつまみ上げられたように、脇息から顔を上げて驚いていました。
お話相手は、お扶持医者の小川玄堂で、
「いや、手前も、こんなに驚いたことはかつてございません」
と、その驚き具合の顔を白扇であおいでいる。
「で、玄堂」
「は」
「いつの事じゃ、一体それは」
「もう十日あまりの真夜半なのでございます。何者か門をたたく、大勢の声でガヤガヤと騒ぐ、そこで出て見ますと、その怪我人をかつぎ込んでまいりましたので。は。申すまでもなく、医は仁術、ことに御領主様のお扶持をいただき平常安穏に暮しております玄堂、捨ててはおけません。早速傷をあらためました」
「む」
「金創三ヵ所、匕首傷でございます、これはいかん、初めはそう思いました、刀傷よりも短刀の突き傷は加療のかなわぬ場合が多うございます」