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えどさんごくし
江戸三国志
吉川 英治
「報知新聞」報知社、1927(昭和2)年10月~終号未詳
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 577,271 字 · 1141 页
今しも城を退出して来た家老の曾根権太夫で、
「おう、若殿」
驚いて駕を出ながら、咎めるごとく、用人の伝内に外出の理由をただして後、滅相もないという顔つきで、
「おそれ多くも、君は将軍家の御門葉、高貴のおん身として、軽々しく町なかを御遊歩あるは如何なものか。強いてお望みとあれば、せめて駕になと召されて、三、四名の御警固をお連れ遊ばすよう。第一、伝内がお付き添い申し上げながら、それくらいなことに気づかぬということがあるものか。早う駕のお支度をしてさし上げい」
万太郎は心のうちで、人が気楽に歩こうというのに冗談じゃない――と思いましたが、御家老や河豚内は冗談でなく、早くも駕の用意をする。
しかたがなく、それに乗ると、供侍が三、四人付いたのでもウンザリするのに、家老の権太夫と用人の河豚内が、駕のそばについて歩いて来ます。
そして、面白くもない城の附近や、寺町のなんとかという名刹などを見せて歩かされたものですから、万太郎もすッかりまいってしまッて、ひそかに思うには、これは何とかして、おやじと河豚を撒く工夫をしなければ助からない。
そこで、自分の屋敷の者を追い使うような調子で、