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えどさんごくし
江戸三国志
吉川 英治
「報知新聞」報知社、1927(昭和2)年10月~終号未詳
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 577,271 字 · 1141 页
なんと、呪われた美しさ。
いかに美しくとも蜘蛛は蜘蛛として人に忌まれる。
ころびばてれんの娘――お蝶にも青春がめぐってきた。けれど山屋敷にはいろいろな束縛がある。そこへ対象に現れたのが仲間の龍平。
こいつ、仲間にしては小才もあり、垢ぬけのした肌合もあるので、巧みに、お蝶の心をとらえ、よからぬ悪智を吹きこんでいる。
また、お蝶も、こういう所で育ったせいか、数奇な双親の血を交ぜた心に、因果な本能が醸されたものか、とかく悪魔的な行為を好む性格が、男によって、一層早く芽を出して来つつあります。
「――何も考えることはねえじゃないか。おやじの二官が持っている合鍵をちょッと借りて来りゃ、百や五十になる品物は、いくらもあの土蔵から引き出せるんだ。頼むから、何とか都合してくれよ、え、お蝶さん……」
先頃も、同じようなハメになって、お蝶は父二官の合鍵を盗み、父が管理している切支丹屋敷の土蔵から、金目の品物を持ちだして龍平に渡している。もっとも、男に与えたばかりでなく、伊太利珊瑚の生地を売った金では、自分の虚栄をも満足させていたのです。
「いいわ」
お蝶は、遂に拒めない女でした。