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えどさんごくし
江戸三国志
吉川 英治
「報知新聞」報知社、1927(昭和2)年10月~終号未詳
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 577,271 字 · 1141 页
「だが、お前さんは若いに似合わず、なかなか見上げたところがある。おれも元よりいい年をして、初めから日本左衛門のお先棒につかわれたわけじゃねえが、道中それとなく尾いて歩いているうちに、すっかり感服してしまった。――どうして、いくら頼まれたって、お前さんのような侍をムザムザ殺せたものじゃあない」
と少し白髪のみえる首をふりながら、おだてあげるような九兵衛のひとりごとです。
金吾はこの老賊が何の策をもっているか、その奥の手を見破ってやろうというつもりで、わざと語気をあらくして、
「起きろ! この曲者」
とばかり、いきなり長くのばしている足の先を蹴とばし、杖の一刀を抜こうとして見せました。
「おや、怒ったね」
九兵衛はクルリと一つ転って居坐りになりながら、
「どうして怒るんだ先生」
煙管をとって中段にかまえます。
「ここへ追いつめて来た者を探しているところだと申すに、あくまで邪魔だてをするやつ、察するところ、おのれ伊兵衛と申すやつと企んでまいった……」
「笑わしちゃいけません、日本左衛門の下風にさえつかねえ秦野屋です。だれがあんな者の相棒になって、こんな所へのさばって来るものですか。