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えどさんごくし

江戸三国志

吉川 英治

「報知新聞」報知社、1927(昭和2)年10月~終号未詳

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 577,271 字 · 1141 页

青空文庫

首のかわりに、その髪の毛でも、たたきつけて見せれば沢山です」

「なるほど」

金吾の心も、何かしら、ほッと救われたようでした。

彼としても、すでに非を悟った上、魔薬の力をかりて自殺した女の首を、むざと、それこそまったくむざとです、掻き斬ッて、いい気持のする理由はありません。

で、九兵衛のいうがまま、首にかえて、お粂の黒髪をぶッつりと切り、くるくると懐紙に巻いて、それをふところに、

「さ、行こうか」

と、先を急ぎます。

「――南無阿弥陀仏」

立ちながら九兵衛はそこを片手で拝んで、

「じゃ、片づけているまもありませんから、死骸はこのままにして行くとしましょう……」と、五、六歩あゆみ出しましたが、ふとまた草の露に振顧って、

「あ、あれ。金吾様見てごらんなさい。ここから見ると、お粂の死骸に魔薬が青く光っていますぜ」

「いや、螢だろう」

「え……な、なるほどそうか。は、は、は、は。九兵衛も少し凡眼ッてやつになりましたかな。だが、煩悩の仏さまだけに、螢もうつりがわるくねえじゃアありませんか。オオどれ」

あとは無言で、暫くの間、螢のやみを駆けました。

そして、鼻寺の近くまで来ると、