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えどさんごくし

江戸三国志

吉川 英治

「報知新聞」報知社、1927(昭和2)年10月~終号未詳

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 577,271 字 · 1141 页

青空文庫

隼のように、彼のふところへとび込む。

そして、振り込んだ十手。

同時に、サッと上がった敵の剣と、持ち直した万太郎の刀とが、そこに三角線の白い光を曳いたせつな!

「やっ、あなたは?」

愕然として、相手はそこへ身を屈して、あとのことばもなく、ガバと、大地に顔をうつ伏せてしまいました。

万太郎は気技けがしたように、自分の前へひれふした男の姿を、不審そうに見つめていましたが、釘勘はせつなに膝を折って、

「もしやあなたは、金吾様じゃございませんか」

と、その手をすくい取って握りしめると、

「おお、釘勘」

かすかに面を上げて、おそるおそる彼と万太郎を見あげるまなざし、それは、まぎれもない金吾であります。

と、万太郎も愕然として驚きの目をいっそう見張りながら、

「えっ――相良金吾だと? おうそちが、おお、金吾か……」とばかり、ただあきれたように自失している。

彼として、金吾の姿をここに見たのは、まったく思いもうけぬ突然でした。その意外さと共に、突然な邂逅が涙ぐましい感激をつきあげて、暫くは言うことばをすら知りません。

が――やがて万太郎の口から出たことばは、常々、金吾が恐懼していたような冷たいものではなかったのです。