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えどさんごくし

江戸三国志

吉川 英治

「報知新聞」報知社、1927(昭和2)年10月~終号未詳

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 577,271 字 · 1141 页

青空文庫

6 またピオの通信は千六百〇三年――日本慶長八年の記号を最終として絶えたるも、絶対にかれは日本政府に捕われたるものにはあらず、そは、後の天草支会の報告書を綜合するもすべて一致すればなり。

彼等は懸命に掘りつづける。その王庁の文章をくり返しながら掘りつづけます。いつか文章に音律がついて歌のようにうたわれながら、根気をつづけているのです。

が――

土の色は黒から赤に変じましても、石の櫃も出て来なければ、ピオの木乃伊もあらわれません。

いうまでもなく、この三人は山岳切支丹族の信徒です。さすがに夜光の短刀をさがすにも、この者たちは慾ばかりでなく、ひとつの信仰が伴っていますから、土にまみれ、汗につかれて来ても、容易にその信念を曲げそうもありません。

懸命はおそろしいもの。

遂に、その信念が何か掘りあてました。

丁二郎の鍬の先に、カチッと、異様な手ごたえがあったのです。

カチッと鍬の刀先に触れたものがあるので、

「おや、何かあったぞ」

と丁二郎が叫ぶと、さてはと眼色を変えて、二人も気早にそこを掘り返してゆく。

土の底ふかく食い込むように埋まっていたのは、うツ伏せになった一個の人体です。