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えどさんごくし
江戸三国志
吉川 英治
「報知新聞」報知社、1927(昭和2)年10月~終号未詳
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 577,271 字 · 1141 页
若い娘だけに、手荒なことはしませんが、無論、風紀を紊す闇の女と思われたのは当り前で、川風の洩れる番所の一間へぽんと抛り込まれたまま夜具も枕もあてがわれません。
弄られたり打たれたり、昼は股火をして退屈している川番所の番太郎や船手の同心に、さんざん売女扱いに調べられた上、お蝶が永代の番屋を放たれたのは、その翌日の午過ぎでした。
相手が、役人や番太郎では、彼女も悄々として見せるより表情がない。
首尾よく自分の素性もばれずに、外へ出されるとお蝶はほっとした顔です。けれど、悲しいのは、再びその体をいじめて来る餓えと空ッ風で、こんな事なら、あの狒々隠居をもっと手玉にとって、お金でも貰って置けばよかったなどと浅ましい後悔もわく。
しかし考えてみると、あの老人を大川の中へ突き飛ばしたのは、少し罪な事とも思い出されました。どうしたろうか今頃は? あの年だから死んでしまッたかもわからない。
「死んだ人の身なんかを考えてやるどころじゃないよ。困ったねえ、どうしようかしらこの私は、いッそのこと、髪結の鶴吉の家へ帰ってやろうか、そして、あの女たちの仲間になってしまおうか? ……」