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かせいへいだん

火星兵団

海野 十三

「大毎小学生新聞」大阪毎日新聞社、1939(昭和14)年9月24日~1940(昭和15)年12月31日、「東日本小学生新聞」東京日日新聞社、1939(昭和14)年9月24日~1940(昭和15)年12月30日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 307,889 字 · 618 页

青空文庫

千二は、袋の中から出してもらえるのだとばかり考えていた。しかしそれはまちがいだった。千二は袋ごと、どさっと下におろされた。その時彼はひやりとした大地を感じた。そうして、ぴちゃりぴちゃりと、さざなみが汀を叩くらしい音を聞いたと思った。

「ああ湖の近くだ」

千二は、おぼえのある磯くさいにおいをさえ、かぎわけた。

「ねえ、丸木のおじさん。僕をちょっと外へ出して下さいよ」

「外へ出して、どうするんだ」

丸木が、怒ったような声でたずねた。

「ちょっとうちへ寄っていきたいんです」

「だめだめ。そんなことはだめだ!」

丸木は、あたまごなしに叱りつけて、

「これから東京へ出るんだ。しっかりつかまっていろ」

外へ出してやるぞと丸木が言ったのは、千二を袋から外へ出すことではなかった。後になって考えて見ると、あの時千二は、湖の底から、何かある乗物に乗って、水面に浮かび出たものと思われる。それを操縦したのは、もちろん丸木にちがいなかったが、その乗物は、一体どんな乗物であったか、それをここに書くと、誰でもびっくりするであろう。

「さあ、出発だ。いいかね」

丸木が、そう言うと、千二の体は、ふたたび袋の中でゆられ出した。