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ゆきのじょうへんげ

雪之丞変化

三上 於菟吉

線上閱讀三上 於菟吉《雪之丞変化(ゆきのじょうへんげ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 344,083 字 · 673 頁

青空文庫

と、いって、雪之丞に目をうつして、

「雪之丞、そなた、これなる者を見覚えているであろうな?」

雪之丞の、美しく優しい瞳が、まともに門倉平馬の上にそそがれた。と、彼のいくらか酔いを帯びて、まるで桜の花びらのように思える面上に、さもなつかしげに笑みが漲った。

「ま、これは、門倉さま、思いがけないところで、お目通りいたしますな」

と、しずかに挨拶する。

平馬は、苦が苦がしさを、あらわにして、

「これは、雪之丞、舞台を見たが、なるほど、男ながらに、女そのまま――生身の変性女子を眺めて、何とも驚き入りましたぞ」

そういう言葉には、ありありと、役者を身分ちがいと見、女がたを片輪ものとさげすむ侮辱がふくめられていた。

しかし、雪之丞は、別にいかりの気色も見せぬ。ほがらかに笑って、

「あなたほどのお方から、女そのままとの仰せを伺えば、わたくし、これ以上のうれしさはござりませぬ」

あっさり受けるその容子を、三斎はゆたかな目つきで眺めて、

「平馬、その方、ふだんからどうも気性が固苦しゅうていかん――もっとも、武芸者は、そうあるべきだが、雪之丞とも、年来の馴染とあれば、双方とも、芸術の達人、今後、したしゅういたしたがよろしいぞ」