Japanische Klassiker mit Furigana
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さんごくし
三国志(三)
吉川 英治
Lesen Sie 三国志(三) (さんごくし) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 312.452 Zeichen · 628 Bildschirme
二
「ああ、眠たい」
閑なので、欠伸をかみころしながら、司令部たる中軍の外に舞う白い蝶を見ていた。
「もう、夏が近いのに」と、無聊に倦んだ顔つきして、同じ所を、十歩あるいては十歩もどり、今度の遠征ではまだ一度も血にぬらさない手の戟を、あわれむ如くながめていた。
かつて、曹操が州から起つに当って、四方の勇士を募った折、檄に応じて臣となった典韋は、その折の採用試験に、怪力を示して、曹操の口から、
(そちは、殷の紂王に従っていた悪来にも劣らぬ者だ)
といわれ、以来、典韋と呼ばれたり、悪来とも呼ばれたりしてきた彼である。
だが、その悪来典韋も、狛犬がわりに、戟を持って、この長日を立っているのは、いかにも気だるそうであった。
「こらっ、何処へゆく」
ふと、ひとりの兵が、閣の廊をうかがって、近づいて来たので、典韋はさっそく、退屈しのぎに、呶鳴りつけた。
兵は、膝をついて、彼を拝しながら、手紙を出した。
「あなたが、典韋様ですか」
「なんだ、おれに用か」
「はい、張繍様からのお使いです」
「なるほど、おれへ宛てた書状だが、はて、何の用だろう」
ひらいてみると、長いご陣中の無聊をおなぐさめ申したく、粗樽をもうけてお待ちしているから明夕城中までお越し給わりたい――という招待状であった。