Japanische Klassiker mit Furigana
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さんごくし
三国志(三)
吉川 英治
Lesen Sie 三国志(三) (さんごくし) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 312.452 Zeichen · 628 Bildschirme
五
帝をないがしろにするにも程がある!」
と、口にこそ発しなかったが、怒りは心頭に燃えて、胸中の激血はやみようもなかったのである。
無意識に、彼の手は、剣へかかっていた。玄徳ははっとしたように、身を移して、関羽の前に立ちふさがった。そして手をうしろに動かし、眼をもって、関羽の怒りをなだめた。
ふと、曹操の眸が、玄徳のほうへうごいた。玄徳は咄嗟に、ニコと笑みをふくんでその眼に応えながら、
「いや、お見事でした。丞相の神射には、おそらく及ぶ者はありますまい」
「はははは」
曹操は高く打笑って、
「お褒めにあずかって面はゆい。予は武人だが、弓矢の技などは元来得手としないところだ。予の長技は、むしろ三軍を手足の如くうごかし、治にあっては億民を生に安からしめるにある。――さるを奔る鹿をもただ一矢で斃したのは、これ、天子の洪福というべきか」
と、功を天子の威徳に帰しながら、暗に自己の大なることを自分の口から演舌した。
それのみか、曹操は、忘れたように、帝の彫弓金※箭を手挟んだまま、天子に返し奉ろうともしなかった。
猟が終ると、野外に火を焚き、その日、獲たところの鳥獣の肉を焙って、臣下一統に酒を賜わったが、何となく公卿百官のあいだには、白けた空気がただよって、そこに一抹の暗影を感じないわけにはゆかなかった。