Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

ja-reading.com

Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.

スウィスにっき

スウィス日記

辻村 伊助

Lisez スウィス日記 (スウィスにっき) de 辻村 伊助 (つじむらいすけ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 216 275 caractères · 410 écrans

Aozora Bunko

小屋に帰ってからも、私達二人は、雪にぬれた靴下や手袋を岩の上に乾し並べて、またじっとその山頂を見つめていた、小屋の屋根からは、絶えず雪解けの水がしたたって、敷きつめたごろた石にあたってはぽちぽち砕ける、丁度春先き庭の雨垂れ落ちの小砂利に、淡い雪の滴が響くような、暢気な調子が、あのいかつい山岳に、睨みつけられている山奥の小屋と、何のかけかまいもない長閑なリズムをなしておる。

彼のヴィーッチはハイランドの山を望んで、曾て驚怖の外に、何等の印象をも残さなかった、蘇国民族の山岳観を、不可思議と感じたが、草に寝て、紫だった遠山を、原の彼方に眺めるのではなく、急流を渉り絶崖を攀じ、いく度か氷河を越えて、初めて、地の底から築き上げた山岳を仰いだ刹那、なお恐ろしさのほかに、何等の感を胸に残しえたものが、果していずこにあったろう、ありとすれば、それはまだ、山岳に対する経験に乏しいのであるまいか、山に住む民族の歴史にも、又はそれをくりかえして山に入る旅人の心にも、――私には遂に疑問である。

山上の日は静かに暮れて、私達はまだ黙々として、彼の絶巓をながめているうちに、小屋の窓をもれて、赤い灯が積雪の上を照らし初めた。