Classiques japonais avec furigana
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ちけむりてんめいじん
血煙天明陣
国枝 史郎
Lisez 血煙天明陣 (ちけむりてんめいじん) de 国枝 史郎 (くにえだしろう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 191 184 caractères · 379 écrans
不運の兄妹
一
それへ冬次郎も熊太郎も、疑惑の眼を注いだが、迎えるようにして歩いて行った。
「老中でありながら病いと称し、出仕をしない田沼意次、では先刻そちが云ったように、生命の危険をおもんぱかって、全く人に気づかれない所の、浅間山麓の山屋敷などへ、一時なりとも身を隠すこと、全然ないとは云われないではないか」
「承りますればお言葉通りで」
駕籠の一団と冬次郎の組とは、その間も次第に近寄った。
「老中などと云ったところで、役目を活かして使おうと思えば、躰が二つあっても足りないほどに、忙がしくもあれば重要でもあるが、殺して使えばいてもいなくともよい。たとえば松平康福侯のように。……戸ヶ崎……熊太郎、あの駕籠は?」
不運の兄妹
一
「女乗り物のようにござりますが」
熊太郎はそう云った。
「ただし供はことごとく武士、あるいは城内の奥の女子が、所用あって町方などへ……」
「それにしては供が仰々し過ぎる。それにこのような夜になって……」
冬次郎は首を傾げた。
と、不意に感付いたように云った。
「先刻貝十郎が云ったのう、数日中に高島お城より、駕籠一挺出るでござりましょうと。……その駕籠に乗って出る奴、田沼と睨んでいるのだが、数日と申したその数日、戸ヶ崎こうなると怪しくなったぞ」