Classiques japonais avec furigana
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ちけむりてんめいじん
血煙天明陣
国枝 史郎
Lisez 血煙天明陣 (ちけむりてんめいじん) de 国枝 史郎 (くにえだしろう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 191 184 caractères · 379 écrans
七
そう、たしかに馬鹿らしく見えた。
にも関わらずそれだから、大蔵や死んだ高阪郡兵衛を、軽蔑しようとは思わなかった。
逆に偉く思われるのであった。
(真面目だのう! 実に偉い!)
こう思わざるを得なかった。
この矛盾!
この矛盾に、彼は苦痛に似た感情を覚え、今草に寝、編笠ごしに、晴れた空を眺めているのであった。
(討ちよい姿勢だ!)
と織江は思った。
ソロッと刀を引き抜いた。
七
栗の木が一本生えており、その木の蔭に佇んで、じっと九十郎の寝姿に、眼をとめていた織江であった。
寝た間もいつもは油断なく、織江の挙動に留意して、気を許さぬ彼であった。
しかるにどうだろう現在の彼は! ほとんど全身隙だらけとなり、無心に空を見ているではないか。
(討ちよい姿勢だ! 仕止められそうだ!)
そこで刀を抜いたのであった。
その織江は今日まで、まあどんなに苦しんだことか!
父兄の敵と一緒にいる。
しかも敵に一再ならず、命を救助されさえした。
が、もちろんそのことに対して織江は恩など感じはしなかった。
九十郎に父さえ討たれなかったら、旅へ出て来る必要もなく、旅にさえ出なかったら司馬又助や、贋一揆の浪人などに、苦しめられるはずもなかった。