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にっき

日記

宮本 百合子

03 一九一六年(大正五年)

N3 · 进阶 · 新字新假名 · 81,739 字 · 164 页

青空文庫

六月二十日

昼の時間に小寺と話をする。小倉末子さんの子供時代の事や人の批評はなかなか出来ないものだなどと云う事をいつもよりたしかな口調で話した。そして音楽などもどうせ弾く人にはなれないからせめてきける人になるのだと云って居た事は女として尊ぶべき心持である。

自分をきく人、見る人として完全なものに仕様とする心持には若い娘はなり難いものである。若しそれが本心だとすれば尊ぶべきことである。私にはそう云う気にはなり得ない。冨山房へ『沙翁傑作集』をよこす様に云ってやる。

六月二十日(火曜)

坪内先生から原稿を送って下さる。夕方御手紙が着いた。前よりもよくなったと云って下さった。終りに自分の感想の様なものを入れるのはどうだと云って下さったが自分では何だか切りつけたものの様になりはしまいかとあやぶまれる。早速御返事を出しておく。

むしあつくて体中の血がにている様な気がする。帰りに吉原さんと久野先生に会う。久野先生はいつもの様に奇麗な顔をしていらしった。吉原さんはいかにも女学校を出たばかりの娘と云った風をして居た。

おっかさんと云う人は只娘を守って居る様な人に見える。

国男が妙にメランコリーになって神経質になって居た。