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にっき
日記
宮本 百合子
03 一九一六年(大正五年)
N3 · 进阶 · 新字新假名 · 81,739 字 · 164 页
八月十八日
八月十九日
執拗なHは、どこまで私について来るつもりなのか、あの人の「弱者の専横」(久米氏の言葉)はどこまで私を苦しめるつもりなのか、あの人の価値は段々下って来る。
八月十八日(金曜)
東京に帰って又、すぐHのあの哀願的な目に見られなければならないと云うことは、たしかに私にとっては苦痛である。あの人の弱々しい好意、執着、すべての点に於て conventional な要求願望を持って生活して居る人と、自分の間には、どうしても内面的の隔りがありすぎる。一致するとか云うことは、考えられもしないことでありながら、送り狼のようにひっついて来られるのは、ほんとうに苦痛だ、たまらない。下らないことに嫉妬したり、私を支配しようとしたり、権威のあるようにしようとされると、憎しみを感じる。
八月十九日(土曜)
天気が大変暑い。目をさますと、坂本さんと母様が二つよこして下さる。坂本さんは、モーパッサンのよろこびそうな処女の病的心理を遺憾なく現わした手紙をくれた。面白いことである。小雨が降る。小学校へオルガンをかりに行った。留守番の男が大変気味悪い顔をして居た。宿直の教師がまだ二十一二の紫メリンスの帯をした男だった。