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にっき

日記

宮本 百合子

03 一九一六年(大正五年)

N3 · 进阶 · 新字新假名 · 81,739 字 · 164 页

青空文庫

七月二十九日

何かしなければ実際にたまらないと思う。強い嵐で千葉先生へも行かれず、どこにも行かれなくなって仕舞った。妙に気の落着かない dreamy な日を送ってしまった。

夜客室の庭をながめた。雨にしずかにぬれた苔と、光る木の葉と、ザワめく風とが、よく調和されて美くしい感じを与えた。初代柿右衛門の香炉は私でもいいのが分る。今の一部の人の求めて居る、ある大きなものがふくまれてある縁であることを感じる。

七月二十九日(土曜)

蜷川氏より、成井氏より 成井先生、千葉先生へ

午後になってから中西屋と東京堂へ行く。Childhood, Boyhood and Youth by Lev Tolstoi と The House of the dead by Dostoevskii と『蒲団』を買って来る。「蒲団」は立派には相違ないけれども今の同氏の作品を見ると、少なからずおとって見えるのはあやまりか?「一兵卒」はもう少し深くかわるところであろう。ロシヤの作品は、これと同じ材料をとりあつかって居ても、もっと深い。馬車にのせられないところなども、私はもっと書きたいと思う。ひどい嵐の夜、外へ立って見る、種々な心持になってスケッチを一つかく。