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にっき
日記
宮本 百合子
03 一九一六年(大正五年)
N3 · 进阶 · 新字新假名 · 81,739 字 · 164 页
三月四日
三月五日
石井柏亭さんの扇面はりまぜの屏風と、青楓さんの二折屏風が図案としてはよかった。
T女史の肖像、パンドラ、が彫刻では目立ってよかった。光風会の方などをいそいだのでよく見て居られない。三越へ廻り、半襟と、白粉入を買う。半襟の特別陳列などはあってもなくってもよい様にさほど心も引かれなかった。道っちゃんに会った。青ざめた顔をして居ていかにも疲労して居るらしい様子であった。
三月四日(土曜)
大変寒い風の吹く日であった。
夜は疲れて居たので何にも書けなかった。午後中掛って千葉先生のを書いてしまったので少し安心になった。本田の道っちゃんが来ておはじきをして遊ぶ。
何となし子供の時分が思い出される様で淡い気持になった。
○小雨する春の夜なれば何となく
静かなる心おはじきをする。
○音もなく降りしきりたる春雨に
土の肥ぞ美くしからん。
夜なれば春の夜なれば何事も
只うるほひて我目にぞ見ゆなる。
静かな夜が――静かな夜が
音もなく迫り来る。
柔かき香をたてゝ……
我心いかにおどるよ
春の夜なるかな。
三月五日(日曜)
お茶の水の入学試験があったので春江ちゃんのために朝早くから、三時頃まで行った。