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にっき

日記

宮本 百合子

03 一九一六年(大正五年)

N3 · 进阶 · 新字新假名 · 81,739 字 · 164 页

青空文庫

五月十九日

五月二十日

五月二十一日

哀れなものよ、けれ共私はその光りを持たなければならない。

五月十九日(金曜)

「追憶」を書きなおし出す。読んで見ると、我ながら満足出来ない所がある。

五月二十日(土曜)

「追憶」を書きつづける。もう大抵出来る。

夜になってあの死に顔の所を書き出そうとすると、妙にこわくなってどうしても書けなかった。実感は恐ろしいものである。

いつまでかかってもいいから、変質他愛病患者を中心にした貧民窟のことを描いて見たい。

非常にのぞんで居るが、まだ一度も左様云う所へ行ったこともないし、見たこともないので、まだ一年二年はかかる事であろう。けれ共どうか好く立派なものを書きたい。

若し正直な観察を以て見てかけば必ずよく出来る事はたしかである。

五月二十一日(日曜)

漢文。「追憶」をかきあげてとじる。

母様によんでいただく。かなりすなおにかけて居るそうだ。

それにつけても坪内先生の方が案じられる。この二三日は夜床に入るときっとあの事を思い出して、若しよかったらこうし様若し悪かったらどうし様などと云う考えがチラチラ湧いて来る。

「貧民心理の研究」を読む。

斯様に彼等の世界があって、彼等の真理のある中に今まで持って来て居た道徳律は何の価値もないものになってしまって居る。