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にっき
日記
宮本 百合子
03 一九一六年(大正五年)
N3 · 进阶 · 新字新假名 · 81,739 字 · 164 页
九月十二日
妙に種々の追憶も湧いて来る。
神官は余り力がありすぎる。或る意味に於ては相場師の様な人だもんで、位置があやうくなって居る。神官は安積の宮本さんの様な人でなければ神官はつとまらない。あの眼鏡からして神官ではない。「我輩は猫」を読む。どうも今の夏目さんの作品から見るとまるで違う。迷亭の駄語にはあきも来るし、又あんまり皮相すぎるようでもある。すべてのことを皮肉に茶化して居るところにあきを感じさせられる。とにかくまだある拘泥したところがある。今ほど心持よくないものである。お雪は何と云ってもああ云う稼業をして来た丈あって異性に対すると、非常に passionate になって来る。
山尾がついそこで、間宮に会ったと云う。あれもつまりは馬鹿な男と云うのだ。
九月十二日(火曜)
青山へ母上と英男と行く。電車の中に居る女を見ると、皆後姿だけ美人が多いのに驚く。私の様にまっ平な帯のしめようや形つきをして居る者が居ない。かえりに芸者がのり合わせた。ずいぶんおひっぴで、安い香水のにおいが臭かった。朝の内坂本さんのところへ行って、いろいろ話をして来る。あの人もこのごろはほんとうによくなって来た。